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【アダルトチルドレンの悩み④】いい子仮面がはずせない<前編>

  • 1 日前
  • 読了時間: 13分

「いい子症候群(いい子志向)」は、アダルトチルドレン(AC)が抱える代表的な悩みの一つです。人間関係の中で無意識に「いい子」「正しい人」「よい性格」「フレンドリー」であることを自分に過剰に強いて、自分を押し殺して相手に従順になります。

【アダルトチルドレンの悩み④】いい子仮面がはずせない

前編では、来談者によく見られる「いい子仮面」傾向の強いACの特徴と、「いい子仮面」を身に着けたプロセス、そして、「いい子仮面」をはずせなくなる理由についてまとめました。あなたがご自分の「いい子仮面」を理解し、自覚するーーいい子症候群からの回復はここから始まります。



よくある「いい子仮面」のケース


アダルトチルドレン(AC)の「いい子仮面」は、ACにさまざまな弊害や不都合の原因をもたらしています。最近のケースについていくつか紹介します。


押されると服従

人間関係で「ノーと言えない」ことが問題やストレスを生むことは誰でも知っています。 いい子症候群でも「ノー」がまったく言えないレベルは少数です。 ただし、「いやです」「できません」と意思表示はできても、ゴリ押しされると服従してしまう人が少なくありません。ことに、押し問答になるよりも、自分の都合を引っ込めたほうが早いと考えて、相手に合わせるのは、いい子症候群の傾向が強い人でしょう。 その結果、自分の作業を後回しにして残業で片づけることが重なり、過労から適応障害を発症し、休職に追い込まれたクライエントさんがいました。一旦は復職に漕ぎつけたものの、再発して2度目の休職を余儀なくされてご来談。約2か月間、「いい子仮面」の改善対策をいっしょに行って復職。今はハイパフォーマンス社員として復活されています。


怒りに過敏

たいていの人は苦手な人、嫌いな人、怒っている人から離れようとします。

いい子症候群の人は、逃げられる場面でも逃げません。むしろ「なだめなくちゃいけない」と、近づきます。飛んで火にいる夏の虫です。誰かが「怒っているんじゃないか」「なんか機嫌が悪そうだ」という不穏な場の空気を少しでも察したら「いい子仮面」を発動させて、怒りを鎮めよう、場の空気をよくしようと身を粉にして、くたびれ果てます。 細部にまで配慮できる嗅覚が鋭い人で、実際、管理職として成功しているジェネラリストに必ず見られる特性の一つでもあります。ただし、日常的にこのような警戒と努力をしている人のストレスは甚大です。メンタル不調に至るケースはよくあります。また、ハラスメント被害者にもこのタイプは少なくありません。


既読即返信の強迫

「いい子仮面」傾向が強いアダルトチルドレンは往々にして相手の顔色をうかがい、気を使いすぎるものです。加えて、メールやチャット、SNSの返信は「すぐに返さなければいけない」と強迫観念的に思い込んでいます。 なかには、そういう対応が必要な職業や業務に従事している人もいるでしょう。けれど「いい子仮面」は、その必要がなくてもメッセージに張り付いています。その結果、一日中緊張状態でストレスが溜まり、コンディションが悪化すると、通知音を恐れるようになります。 このような兆候のある場合、話し合いのうえ、定量的な対応をするのが一般的です。たとえば、メール・メッセージのチェックをする時刻・回数を定めて、それ以外はしないとルールを決めるのです。決して「いい子仮面」を消したり、排除するのではありません。ルールを順守する「いい子仮面」の美徳を活かして、深刻な強迫観念やストレスから脱するのです。


「バレたら終わり」感

たいていのアダルトチルドレン(AC)は、友人と自分の家庭の違いに気づきます。親ガチャに失敗した、毒親育ちの自分への、自己否定や自己非難、生まれながらにして劣っているという劣等感、何かが欠けているといった欠落感情が肥大させます。

ACにとって、こうした自分自身で形成した虚偽の事実は、明かされてはいけない秘密であり、社会に適応するうえで「バレたら終わりだ」と考えます。そのため人並み以上のガンバリで、いい子・できる子であろうとするのです。

明らかな「いい子仮面」のACの口癖は「仕事は120%で返す」。期待され、求められたら、それ以上で応えるのが自分の使命。当然ながら、周囲からの評価は高まり、幹部、管理職への抜擢の機会も多くなります。しかし、そうなってさえ、自己評価は低く、「大したことない」と他者による高評価もお認めになりません。一方、心の内で「自分が劣っている」という虚偽の事実の発覚を恐れ続けるのです。



「いい子仮面」はアダルトチルドレンの生存戦略だった


アダルトチルドレンはなぜこのように自分を追い詰めたり、不都合を強いる反応をしてしまうのでしょうか。この問いへの明確な答えが、アメリカの心理療法家、ピート・ウォーカーが表した「4Fモデル」です。

4Fモデル:トラウマ/恐怖体験での防衛反応


4Fモデル:幼少期に身に着けた4つの防衛反応

複雑性PTSDの専門家であるピート・ウォーカーは、長年の治療経験から、アダルトチルドレン(AC)をはじめ、幼少期に逆境的体験によってトラウマを抱えた人たち(ACEs)が、生き抜くために特徴的な防衛反応を身につけることを発見します。防衛反応には頭文字Fで表される4つのタイプがあり、AC/ACEsは成長過程でそのうちの一つのFをメインに、残りをサブとしてFの組み合わせで生存戦略を確立します。「いい子仮面」もその一つで、④Fawnタイプに該当します。つまり「いい子仮面」はあなたの性格ではありません幼少期にメインに選んだ防衛反応であり、過酷な幼少期を生き抜くための生存戦略だったのです。 ウォーカーによれば、メインのFは、大人になってからの人間関係や自己感覚に影響を及ぼし、4つのFのバランスや偏りが、回復の手がかりにつながるとしています。


①Fight(ファイト):戦う /ナルシシズム的防衛

怒りや対立によって自分を守ろうとする。攻撃的で「強くあろう」とし、安全のためなら他者を支配する。 【リスク】周囲を傷つける、孤立、DV加害、職場衝突 【自律神経系】交感神経系


アダルトチルドレン(AC)のタイプでは反抗的なスケープゴートとして表現されることもあります。また、支配型毒親虐待型毒親搾取型毒親の影響下から離れる過程で、ACがFightタイプを選択するケースもよくみられます。 強い自己主張によって、自己実現や目標達成していくバイタリティを発揮しますが、戦いに疲れ、とくに自分のことを「めんどうだ」「どうでもいい」と投げやりになるがちです。また、自己評価や尊厳感情が低く、対人面で孤立することがあります。


②Flight(フライト):逃げる /強迫的防衛

逃げることによって安全を保とうとする。不安や恐怖から逃避のみならず、過剰な言動や表現、忙しさでも回避を試みる。

【リスク】逃避傾向、過労、燃え尽き、依存症、転職遍歴

【自律神経系】交感神経系


アダルトチルドレンのタイプでは、ヒーローイネイブラーとして表現され、燃え尽きるのがFlightタイプです。機能不全家族からの離脱過程で選択されるケースもありますが、搾取型毒親を黙らせるため、仕事に忙殺されるように自らを追い込むこともあります。 生存戦略として逃げたり、放棄することで、目標や夢をたやすく手放したり、諦めたりしがちになります。そのため、満足感や達成感がなかなか得られないと、強い欠落感情や劣等感を抱きます。


③Freeze(フリーズ):凍りつく /解離的防衛

恐怖やストレスに直面したとき、身体・精神の活動を停止・麻痺させる。無力、無反応、解離状態に陥る。感覚・感情を麻痺させ、思考を停止させ、沈黙し、嵐が過ぎ去るのを待つ。

【リスク】ひきこもり、機能停止、アイデンティティの消失

【自律神経系】背側迷走神経複合体


アダルトチルドレンのタイプでは、ロストワンとして表現される典型例です。虐待型毒親に虐げられたり、親の夫婦喧嘩やDVを目撃した場合、Freezeを選択するケースが見受けられます。 自分の存在を否定することで最悪の状態を避けることから、アイデンティティや自尊感情の確立が難しさを抱えがちです。「自分」「自分ごと」という感覚が持ちにくかったり、自分がどう感じているか曖昧、あるいは無関心になるケースもあります。


④Fawn(ファーン):迎合する /共依存的防衛

相手の機嫌や要求に合わせて自分を犠牲にすることで危機を脱する。愛想をよく、いい子になり、相手に合わせ、服従する。

【リスク】搾取、共依存、ハラスメント被害、境界喪失

【自律神経系】腹側迷走神経複合体


すべてアダルトチルドレンのタイプに該当しますが、なかでも、優秀になることで親の機嫌をとるヒーロー、かわいらしさで取り入るピエロ、役立つことで問題解決を試みるプラケーターイネイブラーはFawnの典型です。それぞれのやり方で、自分の安全を守るだけでなく、機能不全家族を治安維持活動に努めてきました。 Fawnは幼少期から「いい子仮面」で自分を殺し、相手を立てます。そのため自分の価値基準(自分軸)がしっかり持てなかったり、相手の価値観に依存的になります。「いい子仮面」が押しに弱く、怒りに敏感で、顔色をうかがってしまうのは自分軸の脆弱さゆえなのです。



アダルトチルドレンが「いい子仮面」をはずせない理由


もしあなたが「いい子仮面」を自覚しているなら、「どうして自分はこうなんだろう」と否定的な感情をもつかもしれません。くり返しになりますが、「いい子仮面」は生存戦略であって、性格ではありません。さらに、環境や社会、生理学的に選ばされた側面もあります。「いい子仮面」を身に着けてしまっても、はずせなくても、あなたは何一つ悪くありません。自分を責めるのはもうやめにしましょう。


幼な子はFawn=迎合を身につけやすい

【迎合する(④Fawn)】という防衛反応は、人生のかなり早い時期からできるようになります。これも「いい子仮面」を手放すのが難しい理由の一つといえるでしょう。


親が怒りを向けてきたらーーそれが正しかろうが、誤っていようがーー幼い子どもにとっては恐怖です。生まれて数時間で自立し、歩き回れるようになる小鹿やひよこと異なり、ヒトの子はつかまり立ちができるようになるまで早くて半年かかります。恐怖を乗り切ろうとして、【戦う(①Fight)】/【逃げる(②Flight)】は能力も体力もなく、選択できません。


一方、【凍りつく(③Freeze)】と【迎合する(④Fawn)】は赤ちゃんにもできます。赤ちゃんは、3~4か月で感情表現が豊かになります。この頃から何らかの問題に対して【凍りつく(③Freeze)】を選択した「サイレントベビー」が現れます。 同様に、赤ちゃんは表情によって「親が喜ぶ」ことを学び、愛情形成やコミュニケーションを発達させるプロセスで、いい子にしたり、可愛らしく振る舞うことを覚えます。それ自体は悪いことではありません。ただし、危険な状況下で「親の機嫌をよくする」のがいちばんの安全策だと学んだ赤ちゃんは【迎合する(④Fawn)】を選択し、「いい子仮面」を実践するようになります。


環境がFのバランスを左右する

アダルトチルドレンに限らず、4Fモデルは誰もが持っています。4Fモデルは生存戦略ですから、環境によって経験的に選ばれていきます。【迎合する(④Fawn)】の「いい子仮面」が有利な環境は少なくありません。


攻撃的な親への戦略 【凍りつく(③Freeze)】と【迎合する(④Fawn)】が安全

【戦う(①Fight)】は反撃され、【逃げる(②Flight)】は罰を受ける。 支配する親・過干渉な親への戦略 適応には【迎合する(④Fawn)】一択 【戦う(①Fight)】、【逃げる(②Flight)】は懲罰、【凍りつく(③Freeze)】は問題視される。


無視する・不在の親への戦略

【凍りつく(③Freeze)】でやりすごす

【逃げる(②Flight)】で他者を頼る戦略もあるが、放置子のリスクが高い。【戦う(①Fight)】、【迎合する(④Fawn)】は無効。


物理的な育児放棄への戦略

【逃げる(②Flight)】で必死に生存可能性を探る。ただし放置子になるリスクは高い。

【迎合する(④Fawn)】は問題解決できない。【戦う(①Fight)】と【凍りつく(③Freeze)】は破綻。●


有名園・受験校での戦略

高評価を受ける【戦う(①Fight)】を発達・強化させる。


お坊ちゃま・お嬢様学校での戦略 圧倒的に【迎合する(④Fawn)】が有利


放置子の戦略

受け容れられるために【迎合する(④Fawn)】を選択。


環境が選んだ以上、「いい子仮面」をはずすには環境を変える必要があります。


自分でコントロールできない神経生理学的な反応

そもそも「いい子仮面」を含む4Fモデルは無意識化で行われる自律神経の働きによるもので、意識的になんとかしようとしてもどうにもなりません。これも「いい子仮面」をはずせない理由の一つです。


精神医学・神経科学の大家ステファン・ポージェス博士の「ポリヴェーガル理論」によれば、ヒトの自自律神経系には3つの神経枝があり、4つのFは異なる自律神経の働きに起因します。


初期の脊椎生物、軟骨魚類が備わった自律神経が背側迷走神経複合体です。睡眠・呼吸・心拍・消化吸収など生理現象を司ります。生命の危機に瀕して【凍りつく(③Freeze)】という反応は、もっとも古くに生物が備わったこの自律神経が司ります。


次に現れたのが、硬骨魚類が備わった、活動時/覚醒時の生物が用いる交感神経系です。【戦う(①Fight)】と【逃げる(②Flight)】を司るのは自律神経系です。現在に見られる一般の魚類の発生から、生き物は威嚇したり、逃げたりすることでできるようになったのです。


そのあと、脊椎動物が腹側迷走神経複合体という自律神経を備わるには、数億年の時を経て、哺乳類の発生まで待たなければなりませんでした。哺乳類になってはじめて、表情や声のトーンから相手の感情を受け取る、自分の気持ちを伝える、空気を読むということが可能になったのです。危機に陥ると相手に好かれて危機を回避しようとする【迎合する(④Fawn)】は、この自律神経が司っています。つまり【迎合する(④Fawn)】は生物としてもっとも進化した社会的な反応であるともいえるのです。


恥と和ーー日本の社会的な背景

社会的な防衛反応である【迎合する(④Fawn)】の「いい子仮面」は、日本社会で選択されやすく、発達もされやすかったと考えられます。

個人主義が発達した欧米社会では【戦う(①Fight)】を強化させ、失敗した場合は【逃げる(②Flight)】を選択して再起を図ります。失敗には寛容ですが、【凍りつく(③Freeze)】や【迎合する(④Fawn)】のあきらめや打算は評価されません。 一方、調和が重んじられ、恥文化を持つ日本社会では【迎合する(④Fawn)】を発達させ、忖度を学びます。劣等感が強かったり、厭世観を募らせたり、ドロップアウトした場合、【凍りつく(③Freeze)】を選び、社会からひきこもります。和を乱す【戦う(①Fight)】には否定的で、【逃げる(②Flight)】に批判的な目を向け、責任を追及します。 こうした社会性の違いも、日本では迎合する(④Fawn)】の「いい子仮面」が手放しにくい要因ともいえそうです。



「いい子仮面」を生かすことが回復に導く


生き抜くための戦略であった「いい子仮面」を、わたしたちが成長や進化の過程で身に着けてきました。 そんな「いい子仮面」が❝不要❞だったり、まして❝悪❞であろうはずがありません。事実、「いい子仮面」だからこそ成功できた資質、能力を持つ何人ものアダルトチルドレンと出会っています。


いい子症候群のあなたはただでさえ、相手を生かすために自分を殺す傾向がありました。「いい子仮面」を殺さないでください。除去も消去もしないでください。むしろ、考えるべきは正しく生かすことです。「いい子仮面」は夢や目標を叶える味方になります。その鍵は「意識して安全にいい子仮面を使う」こと。後編では、そんないい子症候群の改善・回復方法について紹介します。


AC/ACEsカウンセリング


[AC/毒親チェック]

 


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